アラ還原付日記(仮)

カブに乗ったらこうだった! 制限時速30kmで考えるアラ還からの生活。文学フリマ東京に出品する『アラ還原付日記(仮)』の試し読みブログです。

episode 019 半年間の通信簿 ~納車183日

★アラ還原付日記(仮)その1「崖っぷちペーパー原付ライダー、スーパーカブに乗る」の一部をご紹介しています★

 

2020年3月23日(月)
納車半年。少しは自信を持って乗れるようになったと思うけど、あぁッ失敗した! という苦い思いをすぐ忘れるようになってきたのは問題だ。しつこく覚えていて成長の糧にせねば。

コロナの春

3月8日 第248回TOEIC L&R 中止
3月15日 モーニング娘。'20 コンサートツアー春 中止
3月22日 東京野球ブックフェア2020 中止

いやいやいや。
3月に行くはずだったイベント等、軒並み中止。

長年の中島みゆきファンである夫は、1月から始まったコンサートツアーの、3月10日のチケットを押さえていた。東京は激戦だからと、次に近い(といっても新幹線で1時間半の)愛知公演を狙って勝ち取ったのだ。
が、これも、愛知の前の大阪公演1日目を最後に中止。

悲惨なのは地元に建設中だったシネコンで、グランドオープン予定が3月6日。
いよいよ秒読みというタイミングでこの状況に見舞われ、1日も営業することなく延期になってしまった。
駐輪場も充実の施設なので、ミドリで通いつめようと楽しみにしていたのに。

それでも、ただミドリに乗るだけなら、あてもなく乗ることだってできるわけだが。
これほどまでに何もかも中止に追い込まれるような、未知の病が流行しているというのに、外へ出ること自体気が進まない。

そんなさなかに迎えた、納車半年。
走行距離は1300km弱。1000kmに達してオイル交換に行ったのが2ヵ月前だから、いかに乗ってないかである。
「少しは自信を持って乗れるようになった」という、その自信がどこから出ているのか、だいぶ怪しい。

カブと自転車

たとえばブレーキ。
カブを止めるには、前輪ブレーキ(右手)と後輪ブレーキ(右足)を同時に使うのが基本操作なのだが、とっさの時に手しか動かないことがある。
それまで50年乗ってきた、自転車の癖がしみついているのだ。自転車に足ブレーキはないですから。これは相当危ない。

自転車の癖はまだあって、停止する時、足を地面に擦って止めようとしたり、発進する時、地面を蹴って勢いをつけようとしたりしてしまう。
本体だけで96kg、自分を乗せたら×××kgのカブは、足の力じゃ止まらないし進まない。膝が痛くなるだけだ。

そのくせ、自転車に乗れば乗ったで、バックミラーやウィンカーがないのは怖いな、なんて思ってしまう。
ある時は無意識に右手でスロットルを回そうとしていた。あ、漕ぐんだったと気がついて、漕いで発進した。
自転車ですら半年でこんなにボケボケになってしまうのでは、カブなんていつになったら乗りこなせるのか、不安しかない。

唯一、多少は事態が好転したと思うのは、ミドリに乗っている時パトカーに行き合ってもあまり動じなくなったことだろうか。

納車12日目にして一方通行違反で捕まるという痛恨事からしばらくは、パトカーを見るたび「終わった」と瞑目するのが習い性になっていた。いつの間にかうしろに付かれて、バックミラーに映っていたりしたらもうパニックだ。

心の平穏を保てるようになったのは、「だって違反してないし」といえるから。
制限速度だって守ってるし歩行者優先してるし一時停止もしてるし、灯火類もちゃんと点くかどうか毎回乗る前に点検してるし、免許証も肌身離さず持っている。
一方通行にもものすごく注意するようになった。一方通行ってだいたい「自転車を除く」になっているから、自転車だけ乗ってる限りはほぼ気にする必要のないものだったんですよね。その意味では、いっぺん捕まったのが良い薬だったと思う。

つまり「自信」とは「おまわりさんに怒られない自信」?
それもどうかと思うが、半年を経て「まったく自信がありません」と言い切るのも考えものだ。「できない」を1つずつでも「できる」にするべく、精進を重ねるのみである。

乗らない幸せ

できないことをできるようにするのも大切だけど、安全のためには、できないことはしないと割り切るのも必要な気がする。

私の場合は、雨の日運転と夜間運転だ。

雨具ならある。ワークマンの堅牢なやつ。雨の日に自転車で試してみたので間違いない。
でも、自転車ならともかく原付に、雨が降っているのにわざわざ乗るなんて考えられない。降りそう、くらいでも乗らない。とりわけ遠出(当社比)には、終日晴れマークが並ぶ降水確率0パーセントの日にしか行かない。
たまに、帰り道、思いがけなく天気が崩れて降られてしまう場合がある。冷たいし見えないし滑るしで「命がけ」が何の誇張でもない。雨具でどうにかなるもんじゃない。乗らなくて済むなら乗らないのが最善の策だ。

夜間運転もそう。

3月に入り依然入手困難のマスクだが、「深夜のコンビニで買える確率が高い」とのネット情報を得、週に1、2度、真夜中にコンビニめぐりをするのがミッションになった。
ただし、自転車で。ミドリは使わない。夜道は怖い。自転車でも怖いけど乗り慣れているだけましだ。
若い頃はもっと夜目が利いたと思うんだがなぁ。乗り慣れているからこそ今の自分の限界がわかる。これじゃますますミドリは使えない。

けど、深夜のコンビニでも、マスクが買えるのは10軒回って1軒くらい。
数回行って一度も置いてなかったお店は除外し、新しいお店を開拓、などとやっていると、回る範囲がどんどん広くなる。
うちのほうは坂が多く、自転車は電動アシスト付きでないととても乗り回せない。これが途中で充電切れになると惨事。バッテリーの分、無駄に重い鉄塊と化し、平らな道を漕ぎ進むのさえ難儀になる。

たまに行き合うバイクはラクそうだな。

がらがらに空いた深夜の道をすっ飛ばしたら爽快だろうな……。

ダメだダメだ。ふらふら誘惑に負けたら事故のもとだ。
天気の良い日、明るいうちだけ乗ればいい。それはとても幸せなことのはず。