アラ還原付日記(仮)

カブに乗ったらこうだった! 制限時速30kmで考えるアラ還からの生活。文学フリマ東京に出品する『アラ還原付日記(仮)』の試し読みブログです。

episode 038 バンダナキャップでキメてみた

★アラ還原付日記(仮)その2「生まれ変わってもカブに乗れたら」の一部をご紹介しています★

 

2021年7月28日(水)
バンダナキャップ快適! 綿100%のさらっとしたバンダナが汗を押さえてヘルメットの中がムレムレにならない。ヘルメットを脱いだら一緒に脱げちゃうかなと思ってたけどそれもない。これは1年前に知りたかった。

無敵のヘルメットインナー

ミドリに乗り始めて2度目の夏。
避けて通れない課題は、ヘルメットの内装ムレムレ問題であった。

というのも、初期投資としてバイクショップで購入したヘルメットは、どうやら内装を取り外せないタイプらしい。部分的には外せるけど全部は無理。
それで、外れない内装を引っぱり出せるところまで引っぱり出し、タオルに石けん水を含ませたり水を含ませたりしてはさんで洗っているのだが、とてもめんどくさいし、十分に洗えているとも思えない。

諸先輩のブログ等を読ませていただくと、浴室に持ち込み、丸ごとシャワーを浴びせて洗ってしまうダイナミックな手法もあるようだ。けど、深部に水が入り込んで乾かないとかいうことにならないのかな?

それだったら、手ぬぐいやバンダナをインナーとして頭に巻き、汗や汚れが直接内装に付かないようにするほうが現実的かも。内装の代わりに手ぬぐいやバンダナを洗えばいいのだから世話なしだ。
ただ、手先の不器用な自分は、手ぬぐいなりバンダナをうまく巻ける気がしない。どうせヘルメットの下なのだから、カッコ良く巻けなくてもいいと思うけど、すぐほどけちゃったり、結び目が邪魔になったりしたら運転中の集中力にもかかわるじゃないですか。

とつおいつ思案に暮れるうち、たまたま発見したのが、カジュアルボックスというネットショップ。「ゆるい帽子・ターバン・小物の専門店」とのことで、実用、おしゃれ用、さまざまなラインナップの中に、結ぶための紐を付けたバンダナキャップという商品があった。
結び方の説明動画もある。紐はしっかりつかんで後ろ手に結べる十分な長さがあり、結びさえすればバンダナ本体は余らず欠けず形が整うので、自分レベルの不器用さでも望みがありそうだった。

試しに1枚注文してみた。
結べた。
かくて私は無敵のヘルメットインナーを手に入れたのだ。

良い点・ちょっと困った点

薄くてさらっとした素材なので、上からヘルメットをかぶってもごわごわしないし暑苦しくもない。結び目がつっかえたりもしない。
良さそうだったらもう1枚買おうと思ってたけど、急いで追加注文するには及ばなかった。1日の終わりにちゃちゃっと手洗いして吊しておけば、翌朝にはすっかり乾いてまた使えるからだ。
本当ならこうして毎日洗わなければ衛生的に保てない真夏のヘルメット、よくじかにかぶってたもんだと感心する。

強いて気になる点を挙げるとすれば、ミドリに乗ってる間はいいけど降りてお店などに入る時、バンダナキャップを装着したままでは怪しくないだろうか、という点。
帽子をかぶったり、スカーフを巻いたりして買い物している人だってそこここにいるんだから、バンダナキャップをかぶっていたってどうってことないとは思う。けど、自分自身が何かをかぶって歩くことに慣れていないので、とても変な格好で歩いているような気がしてしまうのだ。

買い物ならまだしも銀行はまずいような気がして、わざわざ脱いで入ったりした。
再装着は簡単なので、それは大した手間ではない。
しかし、ミドリに乗り降りする際、新しい手間が1つ増えると今までの手間を1つ忘れる。バンダナキャップを脱ぐという動作の代わりにキーを抜くという動作を忘れ、挿しっ放しでミドリから離れてしまったりする。戻ってきて「あれ、キーは……?」と、ひとしきりポケットやリュックを探し回ったあと、挿しっ放しにしていたことにようやく気づくのだ。危ないなあ。
ってこれは私の困った点であって、バンダナキャップの困った点ではありませんが。過剰な自意識は捨ててどこへでもかぶって行くか、マメに着脱してキーも忘れないようにするか、どっちかにすればいいだけのこと。

結局どうしたかというと、だいたいのところにはかぶったまま入るほうを選ぶこととなった。
脱ぐことによって、新たな問題が浮上したからである。

髪ぺちゃんこ問題

バンダナキャップを脱ぐと髪がぺっちゃんこになっている。
どうやっても、装着する前の、ふくらんだ状態には戻せない。

そういえば、そうだ。ミドリに乗り始めた頃、運転以外での最初の悩みが、ヘルメットを脱ぐと髪がぺっちゃんこになることだった。運転の悩みがあまりに大きかったので、それに比べれば大した問題ではなかっただけだ。

若い人も気になるだろうけど、元若い人もそれなりに気になりますよ。
だって、年を重ねるにつれ髪は細く薄く、コシがなくなってくる。ぺっちゃんこになった時の残念な感じが若い頃の比ではない。てか、うわー私の髪、こんなに細く薄くコシがなくなってたの……! という無慈悲な現実を見せつけられたのが、私の場合、原付に乗り始め、ヘルメットを脱いだ自分というものを鏡に映した時だったのだ。

とりわけ悲しいのが、左右にベタっと寝てしまった髪の分け目に、白いものが激しく自己主張しているのを目の当たりにする時。
こういうのを目立たせたくないから、必死に髪の根元を立て、少しでもふくらんだ状態を保とうとしているのに。アラ還に残された最後の乙女心をヘルメットは無残に踏みつぶす。いやほんと、言葉どおりの意味でつぶされてますわ。乙女心はどうか知らないが、髪の毛は。

整髪料もいろいろ試してみた。
髪にハリやコシを与えると謳うシャンプーやコンディショナーも使ってみた。
カラートリートメントを頻回に施すことで、白いものが目立ってくるのを抑制するよう努めもした。
だがヘルメットは物理的な力で来るのだ。しょせん液状やクリーム状やジェル状の何かで太刀打ちできるものではない。

ましてやバンダナキャップは、髪をぴったり包んで紐で縛るのだ。ヘルメットより全然へなへなの、薄い布きれにすぎないのに、ヘルメットをはるかにしのぐ威力で髪を押さえ込むのだ。その上からさらにヘルメットで重しをするのだ。

唯一の救いは、バンダナキャップは脱がなきゃ脱がないで済むことだ。そのままかぶっていれば、ぺっちゃんこになった髪を丸ごと隠せるのだ。
もう、堂々と、こういうファッションが好きな人として町を歩けばいいじゃないの。

それでもどうしても、かぶったままでは怪しい人になるような気がして、お店でもどこでも身の証しを立てるべく、品良く話すことを心がけるようになった。
それはそれで良いことかもしれない。おしゃれは内面からだ。